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ポテトに続いて、先輩の前にはハンバーグにセットのスープと大盛りライス、さらにピザまで運ばれてきた。
「ん? どした?」
「それ、全部食べるんですか?」
「うん。松永さん、知らなかったっけ? 俺、めっちゃ大食いで有名らしいよ」
そうなんだ。
どちらかと言えば華奢な外見からは想像もしなかった。
「松永さんは、なんか、自炊とかちゃんとしてそうだよね」
「えっ、全然ですよ。今日も晩ご飯はカップラーメンだったし」
「まじで? 意外だなー。しっかりしてるから、家事もきっちりやってるのかと思った」
「残念ながら苦手です」
しっかり者、真面目、優等生。
なぜだか昔からそんな風に見られることが多かった。
全然そんなことはないのに。
母親からは、いつもしかめっ面をしているせいじゃない? なんて言われたこともあるけれど、それも自分ではよくわからない。
「よかった」
「え?」
先輩はなぜか微笑んで私を見ている。
「だってさぁ、完璧な人だったら、近づきがたいじゃん」
「はぁ」
「なんか、一気に親近感湧いた」
そんなにとっつきにくい印象を与えていたのだろうか?
「時々、ここに飯食いに来てくれるでしょ? 最初はびっくりしたんだよね。1人だったし」
「友達、少ないんで」
「多けりゃいいってもんでもないけどね」
先輩はいつも誰かに囲まれている印象がある。
自然と周りの人を惹きつけるタイプの人は本当にいるんだなぁって、少しの羨ましさと、多くの尊敬の目で見ていた。
「だからさ。気になってたんだよ、松永さんのこと。もっと話してみたいなって」
「えー、そうなんですか?」
あぁ、あれか。珍獣を見るような感じだろうか。
自分ではよくわからないけれど、きっと先輩の周りにはいないタイプなんだろう。
だから、ただ単純に珍しくて興味を持たれたのだ。
そう思ったら、なんだか残念な気持ちでいっぱいになった。
一体、私は何を期待していたんだろう。
エアコンが壊れたせいだ。
非常事態で不安になっていたせいだ。
先輩にちょっと優しくしてもらっただけなのに、もしかして、だなんて。
おこがましいにもほどがある。
私だって、今まで先輩をそんな風に見たことなんてなかったじゃないか。
ただ、素敵な人だなって思っていただけで、恋愛対象としてではなかった。
だけど、がっかりしている自分がいる。
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