城へ

1/2
前へ
/87ページ
次へ

城へ

お兄様という事になって、城に連れて来られた。『魔王の城』と呼ばれるアクマノ城へ。 男ですらない私がお兄様…。 ただ城下で買い食いしてただけなのに、何でこんなことに!? 「そんなに青い顔をしなくても、とって食べたりはしませんわ。お兄様。」 「……はい」 私を『お兄様』と呼ぶマアサ姫の真のお兄様は、この国の王様。 女嫌いで有名なファビアン王様。 王様は『若い娘を城に置かない』と、城下でもよく知られている。 男色の王は女嫌いで、何人も殺しているとかいないとか…。 もし私が女だと気がつかれたら、どうなってしまうんだろう…。 私は女だと言いたいけど、庶民が姫に逆らえるはずもない。 姫が私をお兄様という限り、私は『男』で『お兄様』なのです! 今日から私は男!男!男! 今日から私はお兄様!お兄様!お兄様! まぁ、ファビアン王に会う事なんてないだろうし、殺されるなんて事はないよね。 ……なんて、甘い考えだった。 姫と一緒にいる『偽お兄様』を、真のお兄様がチェックしないハズがない。 でも、これはチャンスでもあるのでは? ここで素直に『私は女です!』って言えば…… うん、無理… 威圧感が半端ない。 お綺麗な顔が非常に冷たい。 金髪碧眼、白い肌、整った顔立ち、すらりと伸びた手足。 うちの父さんと全然違う。同じ人間だとは思えない。 「次のマアサの『お兄様』はお前か」 「はい」 次? もしかして、いっぱいいたの? 「一週間もすれば飽きるはずだ。すまんが、妹の我が儘に付き合ってやってくれ。言っておくが、妹に何かあればその場で殺す。では、俺はこれで。」 「……」 殺されちゃうんですか…… でも1週間くらいで飽きるって言ってたから安心した。 このままお兄様として扱われて『女』だってバレたら、絶対殺される。 買い食いしてただけなのに、極刑まで一直線なんて絶対いや!! 私はアリス! けど、今日からアラン! マアサ様が私につけた名前で、この城でやり過ごす!
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加