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城へ
お兄様という事になって、城に連れて来られた。『魔王の城』と呼ばれるアクマノ城へ。
男ですらない私がお兄様…。
ただ城下で買い食いしてただけなのに、何でこんなことに!?
「そんなに青い顔をしなくても、とって食べたりはしませんわ。お兄様。」
「……はい」
私を『お兄様』と呼ぶマアサ姫の真のお兄様は、この国の王様。
女嫌いで有名なファビアン王様。
王様は『若い娘を城に置かない』と、城下でもよく知られている。
男色の王は女嫌いで、何人も殺しているとかいないとか…。
もし私が女だと気がつかれたら、どうなってしまうんだろう…。
私は女だと言いたいけど、庶民が姫に逆らえるはずもない。
姫が私をお兄様という限り、私は『男』で『お兄様』なのです!
今日から私は男!男!男!
今日から私はお兄様!お兄様!お兄様!
まぁ、ファビアン王に会う事なんてないだろうし、殺されるなんて事はないよね。
……なんて、甘い考えだった。
姫と一緒にいる『偽お兄様』を、真のお兄様がチェックしないハズがない。
でも、これはチャンスでもあるのでは?
ここで素直に『私は女です!』って言えば……
うん、無理…
威圧感が半端ない。
お綺麗な顔が非常に冷たい。
金髪碧眼、白い肌、整った顔立ち、すらりと伸びた手足。
うちの父さんと全然違う。同じ人間だとは思えない。
「次のマアサの『お兄様』はお前か」
「はい」
次?
もしかして、いっぱいいたの?
「一週間もすれば飽きるはずだ。すまんが、妹の我が儘に付き合ってやってくれ。言っておくが、妹に何かあればその場で殺す。では、俺はこれで。」
「……」
殺されちゃうんですか……
でも1週間くらいで飽きるって言ってたから安心した。
このままお兄様として扱われて『女』だってバレたら、絶対殺される。
買い食いしてただけなのに、極刑まで一直線なんて絶対いや!!
私はアリス!
けど、今日からアラン!
マアサ様が私につけた名前で、この城でやり過ごす!
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