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その異変に一番始めに気がついたのは、秋哉だった。
「なんじゃこりゃー!」
野太くでかい声が来生家に響き渡る。
大音量が、まるで地鳴りのように家中を震わせて、
「なんだ! 何があった!」
その声に驚いて、部屋から飛び出して来たのは鈴音。
「スズネ?」
「は? お前なに言ってって――」
蹴つまずいて、声がケンケンと片足で飛んでいくような言葉になったのは、こちらも驚きのあまりだ。
「何で、俺……?」
絶句して顔を見合わせる、春一と鈴音。
ダイニングに一番に駆けつけたのは春一と鈴音のはずなのに、
「俺―っ!」
と叫んだのは鈴音の方。
「なんだスズネ、アタマがオカシくなったのか。変なモンでも食ったのか?」
オロオロと心配する春一。
「俺は、何言ってんだ――」
「は?」
お互いに、その違和感に気がついた。
恐る恐るといった様子で鈴音が、
「……お前誰だ?」
と尋ねれば、
「そーゆーオマエこそ、ダレのドコだよ!」
「そのバカっぽい言い方は秋哉か!?」
「そーだよ、オレは秋哉だよ。目が覚めたら、ナンでかハルの中に入っちまってたんだ。で、そーゆースズネは?」
「……」
「え? 聞こえねー」
「春一だよ!」
「!」
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