冬依→夏樹

53/53
87人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
カエデの声にゆっくりと振り返ってきた冬依は、 「――!」 思わず息が止まるほど、妖艶な笑みを浮かべていた。 この世の者とは思えない色香漂う美人。 今度こそ心臓ごとわし捕まれて、止まりそうになる。 冬依は、そんな笑みを浮かべたまま、 「わかった」 全身を絡め取られるような、甘い声。 「頑張ったご褒美に、明日、カエデが満足するまで抱き潰してあげる」 「抱き潰っ――」 周りのホストたちが赤面する発言を残して、この場から優雅に歩き去って行く。 立ち去った後の香りまで甘い気がする、冬依が残した爪あとだった。 「……抱き潰す……」 その場に残されたカエデは、 「――ベアーハッグ、か」 中学生らしい覚悟を決めて、明日に備えることにした。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!