第1話

3/18
前へ
/61ページ
次へ
「帰りが遅くなっても怒られないとか、最高じゃねぇか。何なら浮気したって、バレなきゃ大丈夫ってことだろ? オレなんて、今日は晩ご飯いるの? 何時に帰ってくるの? 明日は早いの? って、ガキじゃあるまいし……毎日嫌になるぜ」 今日の酒の席で同僚の柴田(しばた)が発した言葉をふと、思い出す。 たとえ妻が口喧しくても、それは相手を心配したり興味や関心を持っている証拠だ。 好きの反対は無関心とは、よく言ったもので相手に関心すら無くなれば空気も同然。 会話もない。 ただ働いて、金を稼いで、寝に帰る。 はあ……。 20代の俺が夢見た幸せな家庭は、どこへやら……。 一体、どこで間違えたんだか。 無機質なリビングを通り過ぎて、俺はそのまま風呂場へ向かった。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加