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俺は回らない頭で仕事を終え、浴びるほど酒を飲んだものの全く酔うことができなかった。
途方に暮れて家へ戻ると、なぜかリビングの灯りがついている。
「おかえりなさい」
静かにドアを開けると、京がイスに座って俺の帰りを待っていた。
「えっ、なんで?」
「おかえりなさい」
「たっ……ただいま」
テーブルの上には、ラップの掛かった肉じゃがと味噌汁が並んでいる。
「それ、あなたの分だから食べないのなら冷蔵庫に入れて明日の朝食べて」
「えっ?」
一体どういう風の吹き回しだ?
俺が昨日、怒鳴ったからか?
「それから、今日お昼頃にサトウ サキエさんという女性がここに訪ねて来たの」
「…………」
「サトウさん、雪の日に路上で転んだところをあなたに助けて貰って、病院まで付き添って頂いたお礼にって菓子折り持って来てくださったわ」
「そうか……わざわざご丁寧に……」
「彼女、若くてすごく綺麗な子だったわ」
「ああ、そうだな……」
「明日は、晩ご飯いるの?」
「えっ?」
何の脈絡もないその質問に、思わず俺は変な声を出してしまった。
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