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プロローグ
沢口光司は曇った目で、一点だけを見つめていた。
だが見つめるその眼は、もう生きた人間の眼じゃない。
いわゆる世間で言うところの、霊というものになっちまった、お化けの眼だ。
台風で遭難した外国の豪華客船の救助活動で、機関室に取り残された最後の乗員を助けに向い、沢口は殉死した。
だが天国からは、未だに永住招待のお声がかからず、海上保安官としての気持ちも抜けきれずに、停泊している巡視船の船首の甲板に腰を落とし、海面を未練がましく見つめているときだった。
そこに、天国のエンジェルや天女ではなく、ユタ仙人だと名乗るサンラー(三郎)という名の、変な名前の霊が、いきなり空からふわりと下りてきた。
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