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鏡に映った顔は、本来の自分の顔ではなかった。
父や母と暮らしていた頃、近所のおじいさんや、おばあさんたちから、恵人くんは美少年だねえ、と褒められていた鼻筋が整ったいわゆるイケメンの顔ではなかった。いま暮らしている施設に来てからは、お世辞でも一度も言われたことはないが。
ま、施設にきて言われなくなつたのは、当然だろう。容姿は家に住んでいたときとそんなに変わっていないと思うが、明るかった性格がひどく内気な暗い少年になってしまったのだから。
その美少年? の鼻筋は右にひん曲がり、ハロウィンの仮装にでも出てきそうな、前頭の皮が4~5センチほど抉れた、血だらけのおどろおどろしい顔になっていた。さすがに目の前に浮いている先輩幽霊の怖い顔には勝てないが、それでも立派な? 恐ろしい顔が、鏡に映っていた。
「驚いたか。その鏡に映った顔が、いまのおまえの新しい顔だ」
「う、うっそー!」
衝撃の声を鏡に飛ばし、眼玉が半分ほど飛び出したような間が抜けた顔をして、化け物になった顔に見惚れた。
いや、あまりのショックに打ちひしがれた顔をさらしたまま、鏡の向こうでも呆けたように口を開けている化け物顔に、釘付けになった.。
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