第1章 霊の後輩誕生 

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「でも、あなたは幽霊じゃないですか。幽霊が、生きている人間を助けるなんて、聞いたことがないです。映画やドラマじゃあるまいし」  恵人は詐欺にはひっかからないぞ、という顔を露わにして応じた。 「いいか、俺も元、人間だ。まだ、魂もあれば、おっと、いまが魂か。まだ良心が残っていれば、救いたい気持ちは 生きているときと同じだ」  やはり、これがプロの詐欺師の巧妙な手口なのか? 沢口は、いままでの皮肉を込めたような話しぶりから一転して、今度は実直そうな口調で声を返してきた。 「でも僕は、死にたくて自分で自殺したんです」  恵人は、沢口の言葉を心で聞き流して、怯えが残る声で応じた。  その言葉を聞くや否や、沢口が物凄い形相で睨みつけてきた。  ただでさえも恐ろしい顔が、背筋も凍りつくような戦慄の化け物になった。
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