第1章 霊の後輩誕生 

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「いいか、天国で家族を見つけるのは深海で5円玉を探すことよりも、ずっと難しいことなのだ。それでも探し続ければ運よく会えるかも知れない。ここでは永久に探し続けることができるからな。だがそれは、おまえの家族が、同じ天国にいれば、の話だけどな」  また沢口の長話が、恵人の顔に降りかかった。 「僕、探します。どんなに時間が掛っても、必ずみつけます」  恵人は、自殺したことに冷や水を浴びせるような、沢口の嘘八百にしか聞こえない言葉を心で否定し、反論口調で言い返した。 「俺が言ったことを全然、理解していないようだな。おまえの両親が同じ天国にいれば、と言ったはすだ。いいか、残念だが、両親に会うことは、永久に叶えられない。天国では、同じ年か、よくてせいぜい、2、3年前に死んだ人たちにしか、出会えないのだよ」 「なぜ? あの 沢口さんに、なぜそんなことが、わかるんです?」  恵人は訊き返しながら心で、この幽霊は自分をたぶらかそうと、また嘘を吐いてきているぞ、と強く思った。  仏教、キリスト教、信じる宗教は違えども、みんな神の世界を説いている。お坊さんや牧師さんが嘘をつくはずなどない。いや中には、いい加減な聖職者もいるのだろうけど。でも信じられるような話ではない。  やっぱり嘘を吐いているのは、沢口だ! 少年の自分を騙そうとしているに違いない、と思った。  
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