第1章 霊の後輩誕生 

10/34
前へ
/791ページ
次へ
 その心の内を見透かしたのか、沢口が話を続けてきた。 「その理由を教えてくれたのが、ある仙人だった。その仙人は天国から落 ちてきたそうで、天国の様子を俺に詳しく説明をしてくれた。その仙人も天国に行くと直ぐに、先に死んだ妹を探してまわったそうだ。だが、見つけられなかった」  そこまで喋ると、沢口はなぜか、ひどく悲しそうに顔を曇らせていた。これが、詐欺師の巧妙な手口というものなのか?  「天国は、いうなれば年代ごとに分かれているそうだ。それとその仙人の話では、天国にいる霊は以外にも少ないらしい。驚きだろう。犯罪者たちだけが地獄に行って、みんなは天国に行けると誰もが信じている。ところが犯罪を犯したことがない人たちも、地獄に放り込まれているそうだ」  疑心を強くしている顔に、また声を飛ばしてきた。 「え? 嘘でしょう? だって、 その人たちは何も悪いことしていないのに、そんなのおかしいですよ」 「いいか、法律は正義ではない。法律を犯せば悪人で、法律を犯さなければ悪人ではないと言えるのかい。権力を握る政治家と官僚たちのご都合や、圧力団体の利益を守るために法律はつくられているのさ。法律なんてのはな、その国のご都合で決まるものなのだよ。日本の常識は、よその国では非常識。これが世界の常識だ」    
/791ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加