第1章 霊の後輩誕生 

12/34
前へ
/791ページ
次へ
「……ずっと、いじめられていたんです」  恵人は、仕方がないという顔をぶら下げて、刑事の尋問に落ちて自白させられたような声で渋々答えると、瞳を校庭に落と した。  また瞳に、中庭の綺麗に整えられた芝生を汚すように転がる、亡骸が映った。そのまま見つめていると、自分をいじめた連中の憎たらしい顔が、また瞼に再登場してきた。  テーブルに雁首を並べた12人の容疑者の中にもいた。5人の同級生がそうだ。もし、ブロックを捨てていった犯人が5人のうちの誰かなら、他のワルガキたちより多く化けて出てやる、と出没回数の倍増と、顔を化粧直し、いやもっと不気味な顔にして脅してやることを即座に決めた。  ひどいいじめを受けた仕返しを倍返しで、やり返さないと、死んだうえに顔を台無しにされた怒りの気持ちがおさまらない。  その特別出演を決めて瞳を上げると、沢口がまた顔を曇らせていた。  おそらくは、イジメという言葉を耳にしたからなのだろう。が、眼が会うと、どういうつもりなのか、化け物に不似合いな微笑みをたっぷりと披露していた。  思わずその顔から眼を逸らした恵人は一言、沢口に助言をしてやりたかった。  逆に、あんたの顔はより不気味になって、 怖さが増しているよ、と。
/791ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加