第1章 霊の後輩誕生 

14/34
前へ
/791ページ
次へ
「フジワラ・ケイト。富士に毛糸か。冬は暖かそうで、いい名前じゃないか。夏はかなり暑苦しそうだがな」 「はあ~。冬と夏? 僕の名前の恵は、めぐみの字です」  恵人は一瞬、怯えを忘れて反発した声で応じた。 「そうか恵に、人か。人に恵まれた子供に。きっとおまえの両親は、幸せに恵まれた人になるよう願ってつけたんだな。それをおまえは自ら命を絶った。まあ、ここでいつまでもこんな立ち話をしていてもしょうがない。行くぞ」  そう言われて、恵人は足下を見た。立ってはいなかった 。ずっと宙に浮いたままだ。  沢口があんまりウザいので、僕は立っていませんと言い返そうと思ったが、頭からガブリと喰われそうな気がしたので、やめた。代わりに、そっとばれないように、僕は立ってなんかいません、浮いています。と心の中で反旗の小旗を振った。 「さあ、俺についてこい」  沢口が元の不気味だらけの顔に戻して、声を投げてきた。
/791ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加