第1章 霊の後輩誕生 

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「おまえ―俺が、そのまずい肉体を喰うとでも思っているだろう? 残念ながら、俺にはそんな趣味はない。間違っても男は喰わん。もし、喰うとすれば、極上の美女だな。それ以外は全然興味ない」 「ぼ、僕の心が、読めるのですか?」 「おまえの、その表情を見たら何を考えているかぐらいは、わかる。くだらん妄想をする時間は、あとでとっとけ。さあ、いくぞ」  恵人は心の内をいとも簡単に見破られて、しばらくは様子見することにした。当面は、この沢口という化け物に従うしかないと思った。  また視線を校庭に落とし、自分のせいで哀れな姿となっている亡骸を見つめた。死んだとはいえ、その体を置いてこの場を離れる気にはなれなかった。  いまさら後悔しても仕方がないが、朝露が残る校庭で無残な姿で転がっている自分の体が初めて愛おしく思えた。毛布でもあれば、体にかけてやりたい思いだった。
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