第1章 霊の後輩誕生 

20/34
前へ
/791ページ
次へ
 80弟のことなど何にも考えずに、自分のことだけを哀れんで、自殺を選択したことを後悔した。  だが一方では、姉の事で毎日のようにいじめられ ていた、もうあの苦しみから逃れることができること、これから両親に、そして、いじめの原因となった姉にも、再会できる嬉しさが、心の中に複雑に混在している、自分がいた。  天国に行っても母や父に会えない、と言っていた沢口の言葉は、いまもまったく信じていなかった。  天国で母と父に会えなかったら、何のために自殺したのかわからない。 「僕には、どうしようもないです」  お兄ちゃん、と声を張り上げて、不安そうな顔をして自分を探し回っている恵吾の姿を見つめたまま、眼を潤ませ、声を落とした。 「いいか、生きているのが辛いから、自殺をしてこの世界に逃げてきたのだろうが、この世界は、おまえが想像 しているようなところなんかじゃない」  沢口がまた胸の内を見透かしているかのように、強い口調で声を飛ばしてきた。   
/791ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加