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【恵】
その心を見抜いたのか、また沢口が腕を引っ張ると、大気圏を飛び出さんばかりに空高く舞い上がった。
恵人はその光景に眼を見張った。東京の街が小さく見える。いや、東京だけではない。関東平野をも一望し、富士山でさえも遥か下に見下ろしている。
いったい、どのくらいの高さに、自分たちは浮いているのだろうか?
この高さで防寒着を着けずにいたら、生きていれば凍え死んでしまうだろうが、霊なので寒さはまったく感じない。
生まれての、いや死んで初めての体験にひどく驚きながら、富士山から西側の景色に視線を向けると、故郷がある東海地方の遠景が瞳に映った。
「どうだ、ここから眺めると、日本という国がいかにちっぽけな世界かが分かるだろう。宇宙に飛び出せば、地球のすべての営みさえも、小さいものだ」
その言葉を耳にしながら、恵人は、まるで自分が宇宙飛行士にでもなったような気分で、眼下を眺めていた。
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