第1章 霊の後輩誕生 

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 父と、母のことを想い浮かべた。  家族全員で過ごした日々が、走馬灯のように蘇った。次々と家族との思い出が鮮やかにと浮かんできて。目頭が熱くなってきた。  いま振り返ると、全てが幸せな日々だった。両親にひどく叱られたことも、兄弟げんかをしたことも恋しかった。 「あそこが、僕の家があった場所です」  恵人は、まだ瓦礫の屑が残っている空き地を指差した。  2人はその空き地に降り立った。   「この辺には住宅が並んでいました。あそこと、あそこには、友だちの家がありました。でも、みんな流されてしまった」  恵人は、伸び放題の雑草の中に埋もれるように僅かに残っている家の土台を見つめ、眼を潤ませた。瞳の奥で家族の姿を追い求めた。 「お母さん、お父さん……」  両手両膝を地面に落とし、家族がよく集まっていた居間の跡地に瞳を向けた。父と母の姿を瞼に浮かべ 、涙を頬に零した。沢口が一緒でなければ、声を上げて泣きたかった。  
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