第1章 霊の後輩誕生 

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 その期待を胸に、ふるさとを飛び回った。だが、どこを探しても両親の霊どころか、親戚の霊も見つからなかった。  失意に打ちのめされた瞳に、高台にある懐かしい小学校が映った。東京の小学校に転校するまでは以前、自分が通っていた学校だ。 「あれは、おまえが通っていた学校か?」  恵人は、沢口の言葉に小さく頷いた。 「恵人、校舎を覗くに行くぞ」    どの教室にも見覚えのある生徒は、1人もいなかった。当然だ。級友たちは小学生ではなく、今は中学1年生だ。学校に通っているとすれば、瞳に映る小高い丘を越えた平地にあ った中学校だ。  だが学校は、今は無い。学校の校舎は地震と津波で全壊してしまった。  生き残った級友たちは、3日前に入学式を終えた隣町の中学校に通っているはずだ。
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