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「冗談だよ。冗談。霊が生きている人間のように、そんなに驚いてどうする? おまえも、悪霊たちに対抗できる霊だということを忘れるな」
「僕が、その悪霊たちと対抗できるのですか?」
恵人は生唾をのんで、言葉を返した。
「ああ、そうだ。いまのおまえに、悪霊たちと戦う力はないが、魂を喰われることはない。相当痛い目には、遭わされるだろうがな」
魂を喰われないと言ったのは嘘だった。これ以上、怯えさせないように、沢口は方便を使っていた。悪霊たちは、見つけた霊を手当たり次第に、捕食していた。
「おばあちゃん、怖い。あそこに、大きいお化けと小さいお化けがいるよ」
女の子の声が、恵人の耳に飛び込んできだ。
「えっ」
またビクッと反応した恵人は、さらに怯えた顔をぶら下げて、周りに眼をやった。が、大きい化け物や、小さい化け物も、どこにも見当たらなかった。ほっと胸をなでおろし、声を発した女の子を探した。
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