第1章 霊の後輩誕生 

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 すると、ここから15メートル程離れた校門に声の主はいた。幼稚園園児と思われる豚鼻をしたアンパンマンのような饅頭顔の肥満の女の子が、祖母の腰に抱きつくように立って、自分を指差していた。 ──人を脅かしやがって! おまえさ、そのブサイクな顔を、鏡で見たことあるのかあ? まともに見たことないだろう? いまは園児の可愛い盛りで少しはカバーしているけど、中高生になったら人のことは言えんぞ!  恵人は女の子を少し強い調子で睨んで、心で罵声を飛ばした。  その人差し指の第1関節と第2関節を曲げろ、そしたら、指の先は自分の顔を指すぞ、と言い返そうと思ったが、園児相手にけんかするのもみっともないのでやめた。 「そう、びくびくするな。いいか、痛い目に遭いたくなかったら、俺の側からしばらくは離れ るな。これもなにかの縁だ」 「……これから、どうするんですか?」  恵人は、いまは園児の特権で、家族だけには一応可愛く見えるだろうが、成人になったあかつきには、いや中学生のお年頃からは間違いなく違う顔へと、見事に変身するだろう女の子から視線を戻し、渋々従うという顔で訊いた。  
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