第1章 霊の後輩誕生 

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「おまえの両親がいないこの地に長くいてもしょうがない。東京に戻るぞ。あそこには、おまえのたった1人の身内がいるからな」  その言葉を聞いて、恵人の心はいっそう重くなり、激しく乱れた。  恵吾の顔を見るのが辛かった。きっと今頃は、自分が死んだと聞かされて、泣いているかもしれない。 「いいか、おまえには、弟を見守ってやる責任がある。おまえは自分のことだけを考えて自殺した。立った1人、残される弟のことも考えずにな。だから、おまえが天国に連れていかれるまでは、弟の側にいてやるのだ。わかったな」  ふるさとに帰ってきたら、もしかして会えるかも知れないと思った、期待していた父や母に会えない失望に強く打ちのめされて、何の罪もない園児にまで八つ当たりするほど、荒れている心を見透かしたかのように、沢口が強い口調で声を続けてきた。 「でも」 「おまえには責任がある。たった1人残された弟が不憫だと思ったら、側にいて見守ってやるのだ。俺がつきあってやる。さあ、いくぞ!」  親父のような雷声を頭に落とす、父より6つ年下の沢口は、またも拒むことを許さず、腕を掴まえると、またスーパーマンのように上空に飛び上がった。
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