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第2章 後悔
【恵】
児童養護施設が、瞳に映ってきた。恵吾は今頃、どうしているだろうか? それを思い浮かべると、辛くて胸が詰まりそうだ。
沢口に背中を押されるようにして、施設の古ぼけた壁をすり抜け、恵吾と暮らしていた部屋を恐る恐る覗いた。
恵吾は、やはり部屋にいた。どうやら自分の自殺を知ったようで、涙を頬にぼろぼろと流しながら蹲っていた。
悲しみに沈む小さな体は、そのまま溶けて消えてしまいそうだった。
恵人は眼を潤ませた。自分の受けた苦しみよりも、弟の悲しむ姿を見ているのが何倍も辛かった。胸が張り裂けそうだった。
恵吾を残して死んだことを、後悔した。手をついて謝りたかった。
心の中で、すまない、と謝り続けた。
詫びることしかできなかった。
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