第2章 後悔

1/4
前へ
/791ページ
次へ

第2章 後悔

【恵】  児童養護施設が、瞳に映ってきた。恵吾は今頃、どうしているだろうか? それを思い浮かべると、辛くて胸が詰まりそうだ。  沢口に背中を押されるようにして、施設の古ぼけた壁をすり抜け、恵吾と暮らしていた部屋を恐る恐る覗いた。  恵吾は、やはり部屋にいた。どうやら自分の自殺を知ったようで、涙を頬にぼろぼろと流しながら蹲っていた。  悲しみに沈む小さな体は、そのまま溶けて消えてしまいそうだった。  恵人は眼を潤ませた。自分の受けた苦しみよりも、弟の悲しむ姿を見ているのが何倍も辛かった。胸が張り裂けそうだった。  恵吾を残して死んだことを、後悔した。手をついて謝りたかった。  心の中で、すまない、と謝り続けた。  詫びることしかできなかった。
/791ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加