第2章 後悔

2/4
前へ
/791ページ
次へ
「あの写真に写っているのは、おまえの姉さんか?」  泣きじゃくる恵吾を悲しそうな眼で、曇ったままの顔で見ていた沢口が眼と顎で写真を指さし、重い口調で訊いてきた。 「は、はい」  返事をした恵人は、思い出が詰まった写真を潤んだ眼で見つめた。  その写真は、自分と姉、弟の3人がこの施設に引き取られたとき、近くの公園のベンチに座って仲良く並んで撮ったものだった。  大切な父母を亡くし、姉に頼るしかない小さな弟2人。だがその姉も死んでしまった。  そして自分も、もうこの世にはいない。 「両親の写真はどうした?」   「つ、津波で全部、流されました」 「そうか……すると、あの写真は、ここにきてから撮ったものか?」 「はい、そうです」  消えそうな声で応じた恵人は、辛くて口を閉じていたかった。
/791ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加