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「あの写真に写っているのは、おまえの姉さんか?」
泣きじゃくる恵吾を悲しそうな眼で、曇ったままの顔で見ていた沢口が眼と顎で写真を指さし、重い口調で訊いてきた。
「は、はい」
返事をした恵人は、思い出が詰まった写真を潤んだ眼で見つめた。
その写真は、自分と姉、弟の3人がこの施設に引き取られたとき、近くの公園のベンチに座って仲良く並んで撮ったものだった。
大切な父母を亡くし、姉に頼るしかない小さな弟2人。だがその姉も死んでしまった。
そして自分も、もうこの世にはいない。
「両親の写真はどうした?」
「つ、津波で全部、流されました」
「そうか……すると、あの写真は、ここにきてから撮ったものか?」
「はい、そうです」
消えそうな声で応じた恵人は、辛くて口を閉じていたかった。
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