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「それじゃあ、姉さんは? 最近、死んだのか?」
沢口の問いに、恵人は押し黙った。
「どうした? 姉さんの死に、何か、訳がありそうだな」
恵人は俯いて、口を貝のように閉じた。
すると沢口が、いきなり右手を伸ばし、左肩を掴んだ。そして掴んだ肩と瞳を介して、相手の心を探るかのような眼をしていた。
「そうか。姉さんは妊娠していて、何か酷い目に遭って死んだのか?」
「えっ? どうして、そんなことがわかるんですか?」
恵人は零れた涙を手の甲で拭い、ひどく驚いた声で訊ねた。
「ここに戻る途中、俺がなぜ空を弾丸のように飛べるのか、おまえに話聞かせた仙人が、相手の心を読み取れる霊力も与えてくれた。完全にではないがな」
自分の心を読み取ったせいなのか、いっそう曇った顔で口を吐いてきた。
「あの、その仙人に会えたら、僕の霊力も強くできますか?」
「おまえの、霊力を強くする?」
「はい。僕の霊力も強くしてほしいです。その仙人に会わせてください」
零れた涙をまた拭いながら、少し強い口調で頼み込んだ。
「おまえ、自分の霊力を強くして、どうする?」
「……ね、姉さんの ……姉さんの、仇を、仇を打ちたいです」
「姉さんの仇?」
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