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「ぼ、僕の姉さんは……姉さんは、A、AV女優でした」
「AV女優?」
沢口はAVという言葉に反応して、びっくりしたような顔で訊き返してきた。
「姉さんは、僕たちのお姉ちゃんは、好きで、AV女優になったのではありません」
沢口に変に誤解されないように、恵人は姉の名誉を守ろうと、すぐに言葉を返した。
「俺は、おまえの姉さんが、別に好きでAV女優になったって思ってなんか、いないぞ」
「お、お姉ちゃんは、弟の恵吾の高い病院代を稼ぐために、A、AV女優になったんです。それまでは総菜屋で働いていたけど、恵吾が重い病気にかかってしまって、高い治療代を払えなくて、夜のお店で働くようになって、それでAVにスカウトされて……」
そこまで喋ると、恵人は声を詰まらせた。
涙まみれの姉のひどく悲しい姿が瞼に浮かんできて、直ぐには声が続かなかった。
「お、お姉ちゃんは、撮影で、妊娠しました。妊娠したまま、お姉ちゃんは、また次の、撮影にいって……死、死にました。僕が、病院にいったときは、もう、死んでいました」
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