第4章 ユタ仙人 

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第4章 ユタ仙人 

【恵】 「どうです? この子の潜在霊力は?」 「うんん~」  沢口の問いかけに、仙人は鼻息のような声を零すと、背中まで垂らした銀髪とお揃いの顎髭を、威厳でも保つかのように右手でいじっていた。いや撫でていた。  そのいじっている、いや撫でている仙人の容姿を、恵人は思わず観察するような眼で、凝視した。自分の好きなアニメの一つで、ドラゴンボールに登場する亀仙人とか、日本風や中国風の仙人の名前でもなく、怪獣映画にでも出てきそうなサンラーという変な名前の仙人は、恵人にはとても老人とは思えなかった。  その鋭い眼光と背筋を真っ直ぐ伸ばして立っている体形からして青年、いや少なくとも中年男が、老人に化けているように思えてならなかった。  すると、仙人のあられもない姿が、脳裏に浮かんできた。  登場してきたのは、櫛がほとんど欠けたようなバーコード頭のおっさんだった。それを確かめたい衝動に強く駆られ、自然に右手が前に伸びた。      
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