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「あっ、やっぱり、3本バーコードだ!」
仙人の頭から引き剥がした髪を、戦利品のように右手にぶら下げて叫んだ。
「こら! 俺の髪を返せ!」
その怒鳴り声が脳内に響いたところで、恵人は慌てて髪を直ぐどぶに捨てると、いやその場に捨てて手をさっと引っ込めて、仙人の頭に眼をやった。
捨てたはずの銀髪たちは、頭上に乗っていた。剥ぎ取っていたのは、残念ながら白日夢だった。
恵人は安堵して吐息をつくと、秋波を盛んに送る銀髪の誘惑に負けて本当に剥ぎ取ってしまわないよう腕を腰に回し、魔の手を封じ込めた。
そして仙人の真の姿を確かめたい子供の素直な純真な心を、いや邪心を振り払おうと、分厚い雲を潜り抜けて眼にしたときの興奮が、まだ残っている周りの風景に瞳を移した。
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