第1章 霊の後輩誕生 

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第1章 霊の後輩誕生 

【恵】  朝露が残る、早朝の、誰もいない小学校の中庭。  時折、少しひんやりとした空気に流れる風の音と、走行する複数の車両の音が遠くから聞こえてくるだけだ。  いや、ここに1人だけいた。    中学校入学式を週明けに控えていた藤原恵人(ふじわらけいと)は宙に浮かび、地面に目を向けていた。  その瞳の先には、不自然な形でうつ伏せに倒れている自分の、小さな体があった。  恵人はその体を、二重瞼の眼を見開いて見つめていた。  いや、正確には呆けたように口を開け、自分の死体を凝視していた。  母校の小学校の校舎の屋上から飛び降りて、地面にしたたか叩きつけられた一瞬までは覚えてはいるが、死後直後の肝心な場面は何一つ記憶に残っていなかった。  記憶にあるのは、肉体から霊が離脱していくテレビで見たことのある、あの名シーン? ではなく、飛び降りた場面と地面に激突する瞬間に、幽体離脱を 終えたばかりの場面だけだった。       
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