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声をかけた方向に振り向いた恵人は、その顔を見て恐怖に慄いた。
なぜなら、男は水膨れのような酷く傷んだ醜い顔に、血糊をたっぷりと付けていて、化け物のような恐ろしい顔をしていたからだ。
「あの屋上から飛び降りて地面に叩き付けられる、おまえの姿を、俺はずっと見ていた」
化け物顔の男は、皮肉を込めたような冷たい口調で喋ると、全身が凍えそうな恐ろしい眼で、慄く顔を射抜くようにじっと見ていた。
「あ、あの、あなたは、だ、誰なんです?」
恵人はひどく怯えながらも、恐る恐る尋ねた。
「俺か、俺はおまえと同じ霊だよ。ああそうか、この俺の顔が、恐ろしいんだな」
男は口を吐くと、頭蓋骨が見えそうなほど大きく抉れて瞼まで垂れ下がっている毛髪と肉付きの頭皮を掴んで、元の場所に貼りつけていた。が、その手を離すと、粘着力が無くなった古いテープが剥がれたかのように、ぶらりと垂れ下がり、元の状態になった。
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