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「ゆかり、なんだか嬉しそうじゃん」
俺は今日もゆかりから呼び出され、いつものように二人で飲んでいる。
「ううん、なんでもないよ」
そう言いながらも、どこか機嫌がいい。
彼氏の死については、まだゆかりは知らないはずだ。
それを知った時、ゆかりは俺以外の人間のために涙を流すのだろう。
そう思うと、面白くない。
俺は大きくため息を吐き、備え付けのテレビに目をやる。
画面には田中健太とかいうリストラ社員が行方不明になったという、つまらないニュースが流れていた。
その瞬間、ゆかりの口角がひときわ大きく吊り上がった。
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