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決意した後の俺は自分でも思った以上に冷静でいられた。
まず、男の情報を集めなくてはならないとは思ったが、それはいとも簡単に果たされた。
落ち着いて彼女の話を聞き続ければ、男の住居などを特定するのは簡単だったのだ。
彼女はにこにこしながら、デートをした場所や彼の部屋に初めて入った時のことなどを語ってくる。
俺は、さもその話に興味があるような態度で突っ込んだことを聞けば、彼女は更に嬉しそうに詳細な情報を話してくれた。
俺は彼女と別れた後、一人で例の男の家へと向かう。
彼女の話によると、奴は今日仕事で朝まで忙しく自宅作業をしているらしい。
つまり、他には誰もいないということだ。
俺はポケットの中を探り、小さな金属の存在を確認する。
これは彼女が自慢げに見せてくれた彼氏の家の合鍵。
酔った彼女のバッグから抜き取ることなど、造作もない事だ。
すべてがうまくいっている。
まるで神が俺に『彼女を救い出せ』と導きを与えてくれているようだ。
俺はエレベーターに乗り、彼氏が住む部屋の前に立つ。
さあいよいよだ。
ポケットのナイフを握りしめる。
失敗は許されない。
だが、これはやらねばならぬことなのだ。
俺はそのままゆっくりと鍵穴に鍵を差し込んだ。
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