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――はずだったのだが。
「あ、この前の! ホントにまた来てくれたんだ」
数週間後、俺はまた例の河川敷に立っていた。
「……何やってんだ俺は……」
「え? 何か言った?」
「いえ別に……」
小首を傾げる彼女に気付かれないよう、小さく溜め息を吐いた。
今日ここに来たのは、あの日以来どうにも気になることができたからだった。
近くで彼女の歌声を、そして夢の話を聞いた時、胸の底で微かに疼くものがあった。
大学の講義やバイトの合間、ふと思考が途切れた瞬間に唐突に蘇る、もどかしさや焦燥感に少し似たそれが一体何なのか、考えてみてもわからない。わからないのに日に日に存在感を増して、無視することができなくなるのだ。
数週間で遂にここに来ざるを得なくなった。
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