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確かに、彼女の歌は上手い。だがそんな奴は世の中に五万といる。それこそプロの歌手の歌が、街を歩けばこれでもかと言うほど流れている。
だがそれらにいつの間にか耳を傾けていた、なんてことは今までに一度たりともない。少なくとも母が結婚してからは。
彼女の歌の何が他と違って、それによって喚起されるこの感情は何なのか。それを知りたかった。
「さっ、どーぞ」
「はぁ」
敷いてあった小さいレジャーシートに座るよう促される。そう長居する気もなかったが、取り敢えず腰を下ろした。
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