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「座頭、久しぶりだな。しばらく邪魔させてもらうよ。こいつは土産だ」 カワウソのくせに、よく響く低音のいい声だった。 座頭と呼ばれた男は、にやりと笑いカワウソの差し出す箱を受け取る。 「ダツ殿。朧堂の大福とは、これまた羽振りのいいことで」 「何、座頭には世話になっておるからな」 カワウソたちは、皆一様に背を丸めて、炬燵に並んだ。 「あんたも入んなさいよ」 座頭が手は炬燵に入れたまま、自分の側を顎で指している。 私は、おずおずと炬燵に入る。 「新顔ですな。私、ダツと申します。以後お見知りおきを」 カワウソの一人が、私に向かって上品な笑顔で会釈する。 「神薙かえでです。よろしくお願いします」 私は、狐につままれた気分のまま、雰囲気に飲まれ、自己紹介をしていいた。 そこでまた障子が開き、ペタペタと水っぽい足音がして、スタンドカラーのシャツに着物と袴を身に着けたガマガエルが入ってきた。 「座頭、しばらくいいでしょうか?」 「やあ、筑波殿。もちろん、どうぞ。先生のお手伝いはお休みですか?」 「ええ、お国の方へ戻られておりまして」 筑波と呼ばれたガマガエルは、これは、これは、朧屋の、と嬉しそうに大福へと手を伸ばす。 それからちらりと私を見て、自分の手の大福と見比べた。 「すまないが、茶を一服、頂けるだろうか?」 筑波のずれた視線の先を追えば、火鉢の上で湯気を上げる鉄瓶があった。 私は、やむなく炬燵から出て、茶筒を手に取る。 「ああ、かえで殿、我らにもお願いします」 無駄にいい声を響かせながら、ダツが片手を上げた。 私は、頷いて鉄瓶から湯を注ぐ。
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