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2眼目 痴れ者が濡らす衣
―――この社会には、虐げられる人々がいる。
その人々の間で、語られる噂がある。
普通の人なら、気にも留めない小さな噂。
だが、どん底に落とされた人々にとって、それは最後の希望だった。
「もう、オレはどうなったっていい…でも、アイツだけは許せない……!」
雨の中、小島 勇人はうなだれていた。
彼の右手人差し指には、血と砂が付着している。
足元には、雨でにじんだ文字。
それは『oculus』…ラテン語で『目』を意味していた。
雨足が強まる頃、彼の背後に音もなくロングコートを来た男が現れる。
勇人はその気配に気づき、静かに振り返った。
「…あなたが…?」
尋ねると、相手は微笑みながらうなずく。
「はい。私こそが『コウサイ』。あなたの望みを叶える者です」
「……よろしく、お願いします」
勇人は深く頭を下げる。
そんな彼にコウサイは近づき、そっと肩に触れた。
「今までよく耐えましたね。あと少しの辛抱です…さあ、参りましょう」
「はい…」
勇人はコウサイに連れられ、すぐそばにある建物の壁に近づいていく。
ぶつかるのも構わずに進むと、空間が歪んでふたりは壁の中へと入り込んでしまった。
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