2眼目 痴れ者が濡らす衣

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壁の中に入りはしたが、その建物の中に入った、というわけではない。 どこにもつながっていないその場所は、どこにでもつながっている場所だった。 「ここは…」 「お座りください、契約の話をさせていただきましょう」 コウサイが示す先には、無骨な椅子がある。 首、手首、足首を拘束する輪があり、座れば逃げられなくなるだろうというのは、誰の目にも明らかだった。 「……」 勇人はそれを見て、恐怖に顔をしかめる。 だがすぐに首を横に振り、椅子へと近づいていった。 覚悟を決めた彼が椅子に座ると、その前にコウサイが立つ。 「よくぞここに座る恐怖をはねのけましたね…あなたは素晴らしい勇気をお持ちだ」 「…勇気なんて、オレには…」 勇人はそう言って、コウサイから目をそらす。 目をそらしたはずの先には、なぜかコウサイの顔があった。 「えっ!?」 勇人はぎょっとする。 自分が見ないようにしたはずのものが、目の前にあることで軽いパニックが起こる。 そこへ、コウサイが微笑みながらこう言った。 「あなたの苦しみは、もうすぐ消えることになるでしょう…」 「…うっ…」 勇人の心臓が、ひときわ強く鼓動を打つ。 直後、彼の中にここへ来るきっかけとなった事件が思い出された。 「うぅ…うおおあああああああああ……!」     
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