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勇人から、それまでの物静かな雰囲気は消え去り、口からは獣のような唸り声が漏れる。
怒りに燃えた目で、コウサイを見た。
彼の変化を頃合いと判断したコウサイは、勇人にこう尋ねる。
「では、ご決断を…あなたが望むのは復讐か? それともこれまで通りの平穏か? どうか私に、あなたの叫びをお聞かせください」
「殺してくれ…! アイツを、あの女を殺してくれぇえええええええええッ!!」
勇人の絶叫が響くと、椅子の拘束具がひとりでに動いた。
彼の首、手首、足首を固定し、逃げられなくしてしまう。
コウサイは満足げにうなずきながら、血の色をしたメスを取り出した。
「承りました…それでは、あなたの左目をいただきます…」
薄暗い部屋に、勇人の絶叫と鮮血が舞う。
ここに、契約は結ばれた。
「ふふー、マジちょろいっつーかぁ、笑いが止まんねー」
「お前も悪いヤツだよなー、げひゃひゃっ」
谷村 美沙は、遊び相手の男とカラオケボックスにいた。
セーラー服をラフに着た彼女の手には、1万円札がある。
それも1枚や2枚ではない。
10枚以上の札を扇状に広げて、自分に向けてあおいでいた。
「ネクラそーなおっさんってカモだよねー。『チカンしただろケーサツ呼ぶぞ』って脅せば、いくらでも金くれるしー?」
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