2人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
彼が驚いている隙に、彼女は彼の手を自身の腰にこすりつける。
つまり、美沙は勇人の手をつかって痴漢冤罪を作り上げていた。
慣れた動きは、彼女に陥れられた者がひとりやふたりではないという証左である。
やがて、驚いている勇人のそばに美沙の相棒である男が現れ、次の駅で彼らは下りた。
駅員が呼ばれ、あわてふためく勇人はみるみるうちに痴漢の犯人に仕立て上げられてしまう。
この時、部屋のドアが開く音がした。
「ちょっ、これ見てよ! 誰かが…!」
そう言いながら美沙はドアの方を見る。
だがそこにいたのは、相棒の男ではない。
「はぁ~い、こんにちは」
カラオケ店の制服を着た瞳だった。
美沙は驚き、素早くモニターの方へ走る。
画面に背中を当てる形で立ち、映像を隠しながら瞳にこう言った。
「な、なによあんた!? 何も注文なんかしてないんだけど!??」
「うふふ、アナタは注文してなくても、ワタシは…依頼を受けちゃったの」
瞳は微笑みながら左手を出し、手を開いて上に向ける。
すると、手のひらの上に目玉が現れた。
「な、なにそれ!?」
「今回のターゲット、間違い…ないかしら?」
美沙の質問には答えず、瞳は目玉に尋ねた。
この目は小島 勇人の左目であり、コウサイにえぐり取られたはずのものだった。
最初のコメントを投稿しよう!