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どこかから、勇人の声が響いてくる。
それは激しい怒りの叫びだった。
”その女…その女だ! 間違いない、その女だああああ!”
「じゃあ、決まり…ね」
瞳がそう言った時、左手にあった目玉が消える。
直後、彼女がその場でターンすると、着ていたものが制服から黒革の装束姿に変化した。
「うふふ」
事態が理解できない美沙に、瞳は微笑みながら一瞬で距離を詰める。
鼻先が触れるほどに顔を近づけ、美沙の顔に右手をそっと添えた。
瞳の左手は振り上げられ、人差し指の爪が銀色に変化し伸びる。
爪の上に、目玉の模様が真紅を帯びて浮かび上がった。
瞳はその体勢のまま、美沙に優しくささやく。
「あなたの右目と命を、いただくわね」
「え?」
意味がわからずに美沙が声を漏らした直後、瞳の左手が振り下ろされる。
銀色の爪が、美沙の右のこめかみに突き刺さった。
「ぎゃあああああああッ!?」
「あはは、いい声」
瞳は楽しげに言い、左手人差し指に力を込める。
指を奥へ突き入れ手前側に引くと、美沙の右目がやすやすと取れてしまう。
「ああああああああああ…!」
痛みと恐怖に美沙は絶叫する。
右目が奪われるのと入れ替わりに、その眼窩へ、どこからともなく現れた赤黒いもやが流れ込んでいく。
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