1眼目 依頼は左目、標的は右目

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安村刑事は楽しげに言いつつ、フードを強引に下ろす。 直後、彼は思わずぎょっとした。 「うお、お前…」 フードの下には、包帯が巻かれた女の顔があった。 その範囲は顔のほぼ半分、左側ほとんどすべてにわたっている。 包帯姿に驚いた安村刑事は、相手に腕を振り払われたところで我に返った。 すぐさま追いかけようとするのだが、そこで気づく。 「な、なに…!?」 瞬きをした直後、女の姿が見えなくなってしまったのだ。 思わず立ち止まって周囲を見回すが、どこにも姿がない。 物陰や塀の向こうを調べてみても、女は見つからない。 呆然と立ち尽くしていると、佐伯刑事からの無線が入った。 ”安さんどこ行ってるんですか! 早く戻ってきてくださいよー!” 「あ、ああ…わかった」 安村刑事は結局、女を見つけることができなかった。 一旦現場に戻り、佐伯刑事や鑑識と作業を進めた後で署へ帰った。 被害者は高村 進次郎…25歳、繁華街にある店でホストをしていた。 売上順位はそれほど高くなく、人気は中の上といったところだった。 「死因は失血性ショック…らしいんですが、どうもはっきりしないようです」
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