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「ちょっと…え? 待って、待ってくれるかしら」
コウサイの方を向いた育美は、右手で自らの顔半分を覆いつつ、左手を前に出す。
考えながらも、コウサイの動きを牽制するようなポーズをとった。
「私が聞いたのは、誰も来ない路地裏で雨の日に『oculus』って文字を、自分の血で書くと…恨みを晴らしてくれる人が出てくる、ってウワサなんだけど」
「はい」
「ひィッ!?」
コウサイは、またも育美の背後に立っていた。
彼女は驚いたせいで腰砕けになり、その場にへたり込む。
コウサイが、彼女を見下ろし微笑む。
「それで間違いございません。あなたはその通りに実行し、こうして私が馳せ参じました…何か、ご不満でも?」
「う、恨みを晴らして…くれるんでしょ? だったら…」
育美はコウサイを見上げながら、ガタガタと震える。
そんな彼女に、彼は何かに気づいた顔をした。
「ああ、なるほど…あなたは私を呼び出せば、それですぐに恨みが晴らせるとお思いなのですね?」
「…ち、ちがう、の…?」
「では、ご説明いたしましょう」
コウサイは指を鳴らす。
すると、へたり込んでいた育美の体が、瞬時に椅子の上へと移動させられる。
「え!?」
彼女が驚きの声をあげると同時に、椅子の拘束具が勝手に動いた。
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