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4眼目 消えた先輩刑事
「安さん、話があります」
「…なんだ」
安村、佐伯の両刑事は、別事件の張り込みをしていた。
今は深夜の2時すぎ、辺りに人気はない。
ふたりは車の中にいた。
佐伯刑事は、視線を前方から助手席の安村刑事に変えて、神妙な面持ちで言う。
「ここんとこ、一体何を探ってるんですか?」
「話はしてもいいが、目を離すんじゃねえ」
「…すいません」
ターゲットとしている建物から視線を外したことを注意され、佐伯刑事は静かに返した。
安村刑事は、彼が前を向いたのを視野で確認すると同時に、再度口を開く。
「探っちゃいたが、もうどうしようもなくなった」
「単独捜査のこと、隠さないんですね」
「わざわざ今言うってことは、俺が探ってるのに気づいたか、その現場を見たかしたからだろ」
「それは…まあ」
「ガラじゃねぇが、一応お前の教育係でもあるんだ。振り回すならまだしも、ごまかすのはいい影響を与えねえだろうしな」
「振り回してる、って自覚はあるんですね」
佐伯刑事は、そう言って小さく笑った。
と、ここで事態が動く。
「来た!」
建物の明かりがついた。
それはつまり、張り込みの対象が帰ってきたということである。
ふたりは急いで車を降り、その建物へ向かう。
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