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走りながら安村刑事は、無線で他の捜査員と連絡を取った。
彼の横顔を見ながら、佐伯刑事はどこかさみしげな表情を浮かべる。
(…なんで、『余計なことに気を回すな』って言わなかったんですか?)
言いかけるのだが、それはできなかった。
やがてふたりは建物に進入し、追っていた手配犯を逮捕した。
「うおぁあああああ!? やめ、やめてくれぇええええええ!!」
「それじゃ、バイバーイ」
絶叫と軽い声。
その落差の度合いを示すかのように、瞳は素早く手を振り下ろす。
絶叫していた男のこめかみに、白く細い指が突き刺さった。
「えぎゃっ!?」
その指は手前側へ向かって引かれ、側頭部の骨を切り裂きながら男の右目をえぐり取る。
鮮血が飛び散った先は、あどけなさと妖しさを併せ持った美貌。
「うふふ」
美貌の持ち主である瞳は、口元に飛んだ血を舐め取り笑う。
やがて男からふわりと離れると、黒革の装束をまとったその体が消えた。
それに少し遅れて、男を見下ろしていた巨大な目玉も消える。
右目を奪われた男はその場に倒れ、痛みにもがき苦しんだ。
「い、痛い! いたいいたいいたいいたいぃぃぃぃいいいいっ! なんでワシが、なんでワシがあああああああ!」
のたうち回る度に、自身の血が絨毯を汚した。
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