4眼目 消えた先輩刑事

3/7
前へ
/39ページ
次へ
毛足が長く面積も広いそれは、遠目に立つと偉人の肖像画として鑑賞できるようになっている。 他にも、部屋には光り輝くばかりの美術品が数多く並べられていた。 そのどれもに、男の血が付着していく。 そして持ち主は、もはや美術品のことなど考えていられなかった。 彼は書斎机の上にある電話に手を伸ばそうとしたが、やがて体を大きく震わせて動かなくなってしまった。 「痛ましいことだが、なあ…」 「最近は、特に新人つぶしがひどかったんです。権藤先生を恨む者はいくらでもいたでしょうね…」 瞳に右目と命を奪われた美術家、権藤 幸三郎の関係者たちが口々に言う。 彼らの言葉を手帳に書き留めているのは、佐伯刑事だった。 聞き込みを終えたところで、彼よりも年若い刑事が近づいてくる。 「先輩、他の人たちにも話聞けました」 「……」 後輩に話しかけられているのだが、佐伯刑事は何事かを考えていてその言葉を聞いていない。 数秒たつと、そばに後輩が立っているのに気づいて、そちらを向いた。 「ああ、杉沢くんごめん、なんだっけ」 「えっと、他の人たちにも話を聞けたって報告に来たんですけど…先輩、どうかしたんですか?」 「あ、話聞けたんだね? じゃあ僕が聞いた話と合わせてまとめていこう」     
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加