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佐伯刑事は、なぜぼんやりしていたのかを杉沢刑事には言わなかった。
後輩は首をかしげてみせたが、追及するのもはばかられたようで、先輩に言われた通り情報を共有することにした。
佐伯刑事は、捜査の最中も仕事の時間が終わってからも、あることをずっと考え続けていた。
(安さんは…一体何を追いかけてたんだろう)
佐伯刑事は、安村刑事とのコンビを解消された。
突然のことだったため、彼は上司に文句を言うべきなのか、安村刑事に文句を言うべきなのかわからなかった。
そしてわからないうちに、安村刑事が署に来なくなった。
自宅を訪ねてみても誰もおらず、誰に聞いてみても行き先がわからないのだという。
佐伯刑事の下には、後輩である杉沢刑事がつけられることになり、今度はこのふたりでコンビを組むことになった。
まさか自分が先輩として後輩の指導にあたるなどとは夢にも思わなかった彼は、このことに大いにとまどった。
だが、命じられた仕事であればやらなければならない。
安村刑事のことは心配だったが、今ある仕事を放り出していくことは、佐伯刑事にはできなかった。
権藤の事件に進展が見られない間に、さらに似たような殺人事件が起こる。
今度の被害者は小さなIT企業の社長、和田 寿明だった。
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