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女性はいきなり絵を出されて驚くが、やがてじっとそれを見つめ始めた。
しばらくしてから、当惑しながらも安村刑事に向かってうなずく。
「こんな包帯はしてなかったですけど…右目の感じとか口元は裕子ちゃんです。あの、裕子ちゃん…見つかったんですか?」
「いや、まだ確定はしていない。だが目撃したという情報があってね。ありがとう、君のおかげで目星をつけられそうだ!」
安村刑事はそう言うが早いか、いきなり部屋を飛び出す。
佐伯刑事と女性はあっけにとられ、その場に取り残されてしまった。
安村刑事は車に乗り、どこかへ向かって走り出す。
法定速度ギリギリで飛ばしながら、その顔に確信をみなぎらせていた。
(おそらく犯人は、設楽 裕子で間違いない…! 必ず、追い詰めてやるからな!)
その目には、炎のごとき輝きが宿る。
絶対に犯人を捕まえるという執念が、彼の中で熱く燃え上がっていた。
設楽 裕子はコウサイとともに壁の中へと進んだ。
その先にあったのは、椅子が中央に置かれた暗い部屋だった。
座面には申し訳程度のクッションしかなく、背もたれやひじ掛けは骨組だけで構成されており、装飾の類はない。
金属製の骨組に取り付けられているのは、首と手首、足首を拘束する無骨な枷だった。
コウサイは、優しげな声と仕草で裕子を誘う。
「さあ、こちらにお座りください」
「…うっ…」
拘束具を目にした裕子は、少しばかりうろたえる。
だが、唇を軽く噛むと、覚悟を決めた面持ちで椅子に座った。
コウサイはそれを褒め称える。
「素晴らしい…あなたの勇気を、私は称えます」
「……ど、どうも…」
裕子は、声を振り絞った。
意識しなければ、緊張でのどが詰まってしまいそうだった。
椅子の固さと冷たさが、彼女の心を加速度的に冷やしていく。
恐怖が一気に膨れ上がり、体が震え始めた。
それを見たコウサイは、喜びの声をあげる。
「ああ、いいですね…あなたは恐怖している。復讐のために私を呼び出しておきながら、自分がひどい目に遭うかもしれないと考えると、怖くて怖くてどうしようもないのですね。わかります、わかりますとも」
「あ、あの…」
「復讐とは!」
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