ある列車が走っていた

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 雪が降りつづく夜……  乗客の少ない三両編成の列車が走っていた。  座席は、背もたれが高い二人用の椅子が並んでいるタイプだった。  女子高生のアヤカと母親は、その中央の車両に乗っていた。  ふとアヤカが、 「あっ、あたしのペンダントが……無い」 「向こうで、また新しいの買えばいいじゃない」 「だめよ。駅で友達が待ってて、一緒に写真を撮るんだもん……」  母親は寝てしまった。  そこへ隣の車両から、モジャモジャのの(ひげ)をはやしてシワシワの服を着た男が入ってくると、泣いてるアヤカに、 「あれ、お嬢ちゃん、どうしたの?」 「あたしの大切なペンダントが……無くなって……」  すると男は、列車の窓を少し開けて、片手を出した。  やがて、その手に、三片(みひら)の雪がのり、三つの雪の結晶が輪になったアクセサリーが出来あがった。  さらに男は、ポケットから、細かくてキレイなクサリを出して雪のアクセサリーに付け、アヤカに手渡し、 「はい、これでいいかな?」 「ワーイ。魔法みたい。ステキー!」  男は笑顔で小さく手を振りながら、少し離れた座席に座り、見えなくなった。  すると母親が目を覚まし、 「ちゃんとお礼を言ってきなさいな」  アヤカが、その席を見にいくと、男はいなかった。が、アヤカは、 「おじさん、ありがとう」
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