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今日
でも、今日は違った。職場から出ると、外が小さな白で覆われていた。雪が降っていた。空はすでに藍色で街灯が灯っている。雪の夜はいつぶりだろうか。その光に反射してきらきらとしている。ふとほかのものに目をやると、自動販売機のボタンの光や、スーパーのネオンで様々な色となり落ちてくる。
「世界中から祝福されているようだ!」
ふと頭によぎった。ドラマだったか映画だったか、それともなにかの歌だったか覚えていない。多分その時はまあ自分のことでもないし特に気にもしていなかったのだろう。でも今ならわかる。小さな雪は銀色でダイヤモンドのように、赤色でハートのように、黄色や青色で花吹雪のように舞っている。私は、祝福されている!
帰り路、いつもはあんなに急いで歩くのに今日はゆっくり歩いた。気分はレッドカーペットを歩いているかのようだった。たくさんの光を包んだ雪が降り注いでくる。私の周りを舞う。祝福が降り注いでくる。
「今日の星座占い一位だったね!おめでとう!」
「今日は久しぶりに電車座れたね!おめでとう!」
「取引先の会社がくれたお菓子、おいしかったんだね!おめでとう!」
そういえば今日は些細だけど嬉しいことが多かった。小さなことだけど
祝福されている。幸せだなと、感じた。
家までのレッドカーペットはあと少しだ。でも今日はもう少しこの祝福を感じていたい。きっと明日にはなくなってしまうから。今日だけの特権。
旦那が帰ってくるであろう時間まであと20分。明日の天気予報は携帯でチェックしたらいいや。晩御飯はまあたまにはレトルトでもいいかもしれない。
今日、カーテンを開けた。まだ雪は降っている。
やっぱりたくさんの色に変化している。ベランダから見える帰宅中であろうサラリーマンも、コンビニから小さな袋を持って出てきたおばさんも同じく祝福されているんだろう。同じことを思ってくれたらいいなと、柄にもなく思ってみた。
5分くらい外を見つめてそっとカーテンを閉めた。
明日は平日だけどお休みだ。いつも売り切れて買えないアップルパイが買えたらいいな。
きっと明日はカーテンを開けない。でもまた雪が降ったら。その日はカーテンを開けて少しだけ豪華なご飯を作ろう。
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