2・前兆

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2・前兆

20XX年。嫌な位に暑く、アイスなんか数秒で溶けてしまうのでは?と感じるほど虫暑い日であった。 そんな環境の中、部活に励んでいる学生がたくさんいた。 神谷 大雅。高校生2年生。野球部。東京生まれ、東京育ち。 青春真っ只中のなか、恋愛には一切関わったことはなく、それよりも友達が少ない。 典型的なよく有りがちな性格で、簡潔に説明すると、「コミュ症」という分類なのかもしれない。なにをやっても平凡。何も特徴がない人間だと自分自身でも思っている。 今日は病院という理由で部活を抜けてきた。 帰り道、小学生だろうか。かなり小さい子達が鬼ごっこをして遊んでいる。いつの間にかその子達を目で追っていた。 「にげろー!!」 「ま、まってよー...」と言いながら楽しそうに遊んでいるのが見える。 鬼はいかにもスポーツが出来なそうな、若干小太りの男の子。あの速度では捕まえられないだろう。 自分も小さい頃よくやっていた思い出がある。影が薄すぎて何処に居るか分からず、みんな帰ってしまった思い出が甦る。 だが自分は足が速い方だと思う。50m走も6秒台と悪くはない方だ。 このような光景を見てると、もっとなにか強い刺激が欲しくなる。 「何か凄いこと起きないかな...」 そんなこと考えてたら家に着いていた。 「ただいま」とボソッと言うと、 「お帰り~!!服玄関で脱いで!!」と母の甲高い声が 聞こえる。 自分と妹、母、父の4人家族。 父は単身赴任で千葉にいる。 いつものように風呂に入り、着替える。 リビングに行って、ソファーに座り、テレビをつける。妹は絵を描いてるようだ。何を描いてるのか検討もつかない。黒い穴を描いてるように見えた。 「部活どうだった?」と母に聞かれたが、 「普通。」と素っ気なく返す。 テレビでは、「今年一番の猛暑で天気が良い」と報道されていた。なんとなく窓に近寄り、空を見渡す。 「あれっ?」おかしい。急に天気が悪くなり、雨の日のような薄暗い景色になった。 それより、都心の方角の空に特別黒い穴を見つけた。 「おかしいな。天気予報でこんなこと言ってたっけ?」そう思い、振り返った瞬間。 人生で感じたことない重力と、音を聞いた。 「なんだ?」思った次の瞬間。窓ガラスが全て瞬く間に割れた。 「こっちきて!!」と母の声が聞こえたが本能的にしゃがんだ。 有り得ない。人が黒い穴に吸い込まれてる。
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