本編

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口紅をつけ終わったとき部屋のドアがノックされ、ママが部屋に入って来た。 「準備できた?」 「出来たよ」 「じゃ、行こうか?」 「うん!」 ママの運転する車の後部座席からママに声をかける。 「何人いるの?」 「あなたの受け持ちは61人、大変だけど頑張ってね」 「大丈夫よ、ママ」 車は繁華街の一角にある駐車場に止まった。 チョコレートが入ったショルダーバッグを肩から下げ、お客さんのところに向かう。 途中後ろを振り返って、刑務所に入っているパパの部下の人達がついて来ている事を確認。 最初はあの人か。 「お兄ちゃん!」 「つ、椿ちゃん?」 「うん、そうだよ、分からなかった?」 「ああ……」 「はい、これ。 じゃあまたね」 「ああ、うん、チョコレートありがとう」 道を歩く男の人達が、私とお客さんを見比べて羨ましそうな表情を浮かべている。 今の人は3ランクあるうちの一番下のお客さん。 上中下の3ランク。 下は、声をかけてチョコレートが入った箱を渡すだけ。 中は腕に抱きつきながら声をかけ、2人で抱き合って別れる。 最後の上は、別れるときお客さんの頬っぺたにチュってしてあげるの。 上中下と次々とお兄ちゃんにチョコレートを渡して行く、小父さんって年齢のお客さんもいるけど、そこは商売だから皆にお兄ちゃんって言ってるわ。
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